俺の出会った犬たち⑩
今日は、奥さんが溺愛したラブラドールの
女の子ぶるまのお話。
ぶるまは、知り合いのおっちゃんのとこから連れて来た。
おっちゃん一家が暫く家を空けるとなって、
俺の奥さんがおっちゃん家で飼っている5匹の犬を世話するようになった。俺の家に連れて来るのではなくおっちゃん家に毎日通っていた。
それが奥さんとぶるまの出会いだ。
奥さん曰く、ぶるまはツンケンしてて全く慣れる様子もなく、人間不信であったらしい。
そんなぶるまと奥さんが急接近したのは、
ぶるまをあまりにも不憫に思いおっちゃんにぶるまを連れて帰ると許可を得て、
ぶるまに『もうすぐ連れて帰るからな。』と
言ったとたん心を開き出したらしい。
その日以来、ぶるまは早く連れて帰って欲しいという態度を取るようになる。
俺もその話を聞き、家の外で自由に遊べるように手作りの柵を作り、ぶるまを歓迎した。
ぶるまは黒のラブラドールであり、更に警察学校に通っていたらしく、非常に頭が良いし、
全く吠えなかった。しかも犬ではなく、心と目で会話ができる娘でまさに人間であった。
食いしん坊も手伝って更に家族から愛されていた。特に奥さんは、日夜共にし親娘そのままだった。いつの間にか、奥さんがぶるまの娘に変わっていた気がする。
そんなぶるまもちょうど3年前に癌で天国に旅立った。
奥さんが一睡も取らず看病を続けたが元気にはならなかった。
ぶるまが死ぬ寸前まで、強い絆で結ばれていた。ぶるまが亡くなる朝、いつもの歩き方と全く違ったため、俺はいよいよかと腹を括っていた。心配しながらも、俺と奥さんは仕事に行った。ただ、奥さんは直感だろうか、ぶるまのために帰ったらなあかんと思い早退で昼に帰った。昼に帰って、ぶるま!って呼んで、ぶるまが振り返った後に白目を向いてそのまま倒れ息を引き取ったらしい。
ぶるまは、奥さんにどうしても会いたかったのだろう。そして、頑張れと言いたかったのだろう。そのハートが更に奥さんを感動させた。
言うまでもなく、火葬する前、火葬してからも、更には当分の間、奥さんは立ち直れなかった。今でもずっと逢いたいと言っている。
その姿を見て、俺は二度とペットは飼わないと誓った。
ぶるまを始め、今まで出会って来た犬たちに
心から御礼を言いたい。
俺の人生を楽しませてくれてありがとう。