俺の出会った犬たち④
当時、俺、少しキレやすい一つ上のカツくん、その弟の運動神経抜群のタケ、温厚な一つ上のヨシくん、その弟の甘えん坊で同い年のあっちゃん、二つ下の金持ちボンボンの鈍臭い、かあくん。この6人の団地仲間でよくつるんで遊んでいた。
いつものように6人でつるんで前回お話した野良犬で有名な県立の公園に向かっている最中、
事件が起こった。
道いっぱいに広がって歩いている中、突然俺たちより遥かに年上の中学生が抱いていた飼い犬を俺たちに向けて放した。
その犬のハンパない興奮と勢いに俺たちは負けてとにかく逃げまくった。
まず、俺は10メートル先にある教会の石垣を
スパイダーマンの様に登りとにかく、できるだけ上を目指した。
あるものは、消火栓をつたって電信柱に、あるものは、俺と同じ石垣に、あるものは更に遠くに向かって走り距離をかせいだ。
俺は、登った石垣から冷静に一部始終見ていた。
興奮した犬もようやく飼い主のもとに戻り飼い主と共に家に消えていった。
俺の号令でみんな集合。
すかさず点呼。一人足りない…。
嫌な予感がした。足りないのは一番年下で鈍臭い、かあくんだ。
かあくんの居場所はすぐ分かった。
泣きながら左腕を押さえて出てきた。
出て来た場所は、なんと石垣の下の少し下がったところにある地下のガレージ。
普通、地上よりも上に逃げるのがセオリーだが、かあくんは下に逃げてしまった。
なんとも、かあくんらしい判断である。
押さえてる左腕にはくっきりと二ヶ所に牙の跡が入っていた。跡と言うか穴だ。
正直、俺はそれを見て大丈夫かと心配しつつ、
腹の中では笑っていたことを未だに反省している。周囲の仲間はどう思っていたのかは分からない。
俺たちは、団地までの長い距離を急いで帰り、おかん達に話をした。
まずは、かあくんは病院へ。
その間、俺たちはおかんに事細かく説明した。
やがて、かあくんは腕を二針縫って病院から帰って来た。
その後の顛末はよく分かっていないが、飼い主の家に行ったのは間違いないが、警察に行ったのかどうかは知らない。
とにかく、凶暴な犬の話と鈍臭くて憎めない仲間の話だ。
次回は、おかんが病気で亡くなりおとうの実家に戻り初めて飼った二匹の犬の話をしたいと思う。